めごめも!

ひとりと1匹の生活記録。

知財戦争

4106100894知財戦争 (新潮新書)
三宅 伸吾
新潮社 2004-10

by G-Tools

プロローグ 知財に泣き、知財に笑った男
第1章 遺伝子スパイ事件―さらけ出された「無防備な日本」
第2章 闘争の現場
第3章 世界の知財政策
第4章 発明者vs.企業
第5章 思い出の事件を裁く最高裁
第6章 知財を担う人々
第7章 「知財立国・日本」への壁

面白かったです。新書ですが読み応えあり。以下気になったフレーズなど。

  • 「21世紀は卓越した1人の天才が10万人を食べさせる時代」(韓国・サムスングループの李健熙会長)
  • 「中国は米国を凌ぐ超プロパテント政策をとるのではないか。『10年前は偽物を作っていたが、今は俺の方が上だ。四の五の言わずに金を払え』というのが中国の国民性。日本は気をつけないと大変なことになる」(日本貿易振興会北京センターの日高賢治・知的財産権室長(当時))
  • 「人間が作り出すあらゆる発明は特許とする」(米独立宣言の起草者である第3代大統領ジェファーソン)
  • 職務発明制度を持つのは現在、日本、ドイツ、韓国だけ。日本の特許法の母国であるドイツでは、紛争を避けるため、発明報奨の詳細なガイドラインを政府が設けている。しかし、その詳細な注釈書は2000ページにもなり、評判は悪い。(中略)そのため、研究所や工場を外国に移す動きさえ出てきたという。
  • シンガポールでは他国の知恵を利用する面白い仕組みを導入している。企業がシンガポール知的財産権庁に特許出願した際、英、オーストラリア、米、カナダで特許が認められたことを報告すれば、自動的にシンガポールでも特許をとれるのだ。「修正実体審査」と呼ばれるこの特別な手続きは、外国企業からみれば、シンガポールに安心して技術移転したり工場進出できる助けになる。シンガポールと日本はFTA(自由貿易協定)を結んでおり、2002年8月からは、日本で特許が成立すれば「修正実体審査」手続きを通じてシンガポールでも権利がとれることになっている。

→やっぱりシンガポールだよな、と思います。こういった面からもシンガポール政府が本気で知財立国にする、という姿勢が見て取れます。立地条件、言語面、政府のテコ入れ具合、どれをとってみても、中国もさることながらこの小さな都市国家がこれから脅威になるように思えます。

  • 文系の裁判官が特許裁判を行う難しさ。
  • 産学の関係が疎遠な状態へと変化したのには実は歴史的な背景がある。第二次世界大戦の戦時体制下では、軍・大学・軍需産業の共同戦線が敷かれたが、戦後の民主化のなかでこうした産学の結びつきは否定された。産学連携はその後の学園闘争でも批判の対象となり、工学部と企業間の共同研究は難しくなった。

→あー・・・・学園闘争って一体何なんでしょうね。あれが生み出したもの・・・。もちろん一部だと思いますが、あの世代が日本をダメにしているような気がして、最近なりません。自分の意見が一番正しいと思って他人を受け入れない人も多いし、色々主張するのですが「じゃああなたは?」となると話をすりかえるというか、自覚がないというか。「そっくりそのまま、あなたのご意見をあなたにお返しします」ということも多いです(苦笑)。すべてを否定する人も結構いますし、世代的な特徴なのか人間的な特徴なのかはよくわかりませんけど。

  • 米金融機関、ゴールドマン・サックス社の予測によると中国の国内総生産(GDP)は2041年に米国を追い越し世界とおぷに躍り出る。ドイツは2007年、日本も2016年には中国に追い抜かれる。2032年にはインドも日本を上回る。あくまで予想だが、これが当たれば世界の文明をかつてリードした「唐・天竺」時代の再来である。

 この予測を裏切って、日本の没落を食い止める切り札になるのが知的財産戦略ではないだろうか。技術や創造性を磨き、中国に使われるのではなく中国を活用する。プロデュース力を高め、ハリウッドに使われるのではなくハリウッドを使いこなすのである。
 日本が「唐・天竺」時代の一島国となるのか、はたまた新たな富を生み続ける舞台となるのか。幾先を決めるのは今後の日本人自身である。

 それにしても、弁護士も足りない。弁理士も足りない。医者も足りない。看護師も足りない。特許庁の職員も足りない。足りないところばかりです。どこにこれらを補う人材とお金が眠っているのでしょうか?移民?女性の活用?人材を増やす分のお金は??日本のビジョンが見えません。何をしたいのか?この国はどこに向かいたいのか?私たち、若い世代が変えられるのでしょうか。