めごめも!

ひとりと1匹の生活記録。

対話の場をデザインする 科学技術と社会のあいだをつなぐということ

4872592913対話の場をデザインする 科学技術と社会のあいだをつなぐということ (大阪大学新世紀レクチャー)
大阪大学出版会 2009-08-04

by G-Tools

第1章 科学技術コミュニケーションが求められる背景(科学技術と社会―その関係性の変化、科学技術に関する「リスク」の感じ方、原子力と社会―日本における経緯)
第2章 対話フォーラムとは何か(なぜ、対話フォーラムが必要なのか、対話フォーラムまでの道のり、対話フォーラムとは何か、対話フォーラムのスタートまで、対話フォーラムの始まり)
第3章 対話フォーラムでの学びと変化(立地地域から見た原子力―「リスク認知マップ」への集約、参加者は、専門家を信頼することができたのか、なぜ専門家を信頼できたのか、住民参加者の変化、学び・変わる・専門家、専門家と市民の「共進化」)
第4章 専門家と市民が「共進化」するために必要なこと(不可欠な三つの要件、誰が参加するのか、「対話の場」の意味)
第5章 科学技術と社会のあいだをつなぐということ(原子力の対話に求められるもの、対話の場をデザインする)

 サイエンス・カフェや科学コミュニケーションといえば、双方向が理想とはいえ、現状では研究者側から一般市民側への発信が多い気がします。そんな中、「原子力」から、市民と研究者が対話していく課程が書かれている本。表紙も素敵だし、面白かったです。

  • 双方向のコミュニケーションであるならば、当然のことながら、そのプロセスを通じて、市民の側だけでなく専門家の側も変化する。しかしこれまで科学技術のコミュニケーションについて論じられた文献では、市民の変化のみに商店が絞られることが多く、専門化が市民との対話を通じて道感じたか、変化したかについて減給されることは少なかった。本書では、専門家と市民の信頼関係構築のためにはむしろ、専門化が変化すること、その変化を市民の側が実感することが何よりも大切であるとの考えから、専門家側の変化にも多くの記述を割いた。
  • ここで注目されたキーワードは、情報の送り手や内容に対する「信頼」である。信頼を獲得するためには多くの根拠が必要だが、信頼できないと認知されるためには、一つの悪い事例があればよい。一方で信頼できないという印象をぬぐうには多くの根拠が必要だが、信頼できるという評価は一つの悪い事例で失われる。
  • JCO臨界事故の直後に地域住民が求めていたのは、そのような専門家ではなく、自分達の近くで、自分達の不安に直接応えてくれる、「顔の見える」専門家であったように思う。
  • もともと市民が専門家を信頼していないという状況で、一度限りのコミュニケーションを行うことは、市民の側に様々な不満を生み、結果として、専門家を信頼できない、できるだけ多くの市民を作り上げることにつながってしまっている。

 「原発のあるまち」ということで、生活に密着していたからこそできたのかなと思う。逆に言えば、女性なら化粧とかファッションとか食とか健康とか、そういう実際ちょっと気になる部分に入り口を見つけることで、うまく何か出来るのかもしれないなと思った。この対話フォーラムが東京じゃ、無理だっただろうなあと思う。最後に、だから難しいんだよおおお、という思いとともに、あとがきの最後の言葉。

むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
いつも人間を愛しつつ
(日本ヒューマンファクター研究所のモットー 黒他勲