病気になりやすい「性格」 5万人調査からの報告 (朝日新書) 辻 一郎 朝日新聞出版 2010-06-11 by G-Tools |
第1章 病気になりやすい「性格」とは?
第2章 肥満になりやすい性格
第3章 心筋梗塞になりやすい性格
第4章 がんになりやすい性格
第5章 認知症になりやすい性格
第6章 自分の性格と、どう折り合いをつけるか?
著者が長年行って来た疫学研究の中でも、「性格」や「気分(抑鬱など)」に関わる研究の集大成的な新書だと思われる。
疫学研究の醍醐味というのは、ちょっとした研究者としての「気づき」「観察」が時間をかけて、壮大な研究となっていくこと。運動が心疾患の予防になるというのは、ロンドンのダブルデッカーの運転手と車掌*1を観察してわかったことだったし(参考→Minds)。本書でも、アメリカの心臓内科医であるフリードマンが、「タイプA」を発見するきっかけとなった観察が書かれているのが個人的には非常に興味深い。
「運命は性格の中にある」(P.51)
「人相や性格を変えるのは境遇(自分の外の環境)であって、自分自身の努力や試みではない」(P.191)
今までの自分の運命が性格の中にあったかどうかは別として、この性格だったから徳をしたこと、損をしたと思っても実は徳をしていたこと等々あるので、「そうかもしれないなあ・・・」と思うと共に、何よりも性格を変えるのは自分ではなく外的な要因、という部分にもうなずけます。私自身、昔はどうにもアレな性格で、周りに疎まれていたと思うけど、大学に入ったこと、部活に入って伝統的な上下関係や人間関係で揉まれたこと、失恋したこと、大学院に入ったことetcで随分丸くなったと思っています。そういう環境に自分の身を置くことは自分で選んだことですが、その環境の変化がなかったらこんなにそれなりの性格でまっとうに人生を送れている、ということはなかったと思います。
最後に何より、去年の年末に難病らしきものが発覚した自分にとって、著者のあとがきが一番心を打ちました。まだ私は、癒されるプロセスまでには至ってないし、今後世間一般的な同年齢の女性が経験するであろうライフイベントが病気のために経験できない「かも」しれないので、癒されるかどうかなんて20年くらいしないとわからないんですが、それでも、いつか自分がこういう境地にいたって、病気を持っていたからこそできた仕事、というものが出来ればいいなと思っています。
*1:バスのチケットを切るから1階と2階を歩き回っている