めごめも!

ひとりと1匹の生活記録。

剖検率100%の町―九州大学久山町研究室との40年

4897751527剖検率100%の町―九州大学久山町研究室との40年 (ライフサイエンス選書)
祢津 加奈子
ライフサイエンス出版 2001-06

by G-Tools

第1章 死亡診断書への疑惑
第2章 部検交渉とカンオケかつぎ
第3章 部検率100%の町
第4章 紛争の中の研究室
第5章 研究を守った町民たち
第6章 収穫と新たな課題
終章  久山町研究の明日

 世界的に有名な日本の疫学研究である「久山町研究」のお話です。久山町研究は昭和37年前後からNIHのグラントをもらって運営していました。45年も前に、世界的にも認められた研究が、日本にあったんです。

 そもそも、疫学研究は立ち上げ時に住民の方の協力を得ることが大変なのですが、さらに部検となると、なかなかみなさん協力していただけないのでは?という心配があるのですが、この久山町研究はその部検率の高さで世界的にもとても有名な研究です。その高い部検率の裏には何があったのか、研究に携わった研究者だけではなく、町民の方や町の行政の方、保健師の方、開業医の方、それぞれの働きぶりが詳しく書かれています。

 世界的に有名な循環器疾患の疫学研究である、フラミンガム研究もそうなのですが、いかに住民の方に研究への理解を深めてもらうか、協力してもらうか。「国が決めたことだから」「えらい大学の先生が決めたことだから」という上から目線の押しつけのようなものではなく、現場で住民の方と実際接し、行政の方ともうまく連携していかないと、こういった研究は成り立ちません。よく「欧米はインセンティブとして謝金とかがあるからねえ」とか言われることもありますが、今別件で読んでいるフラミンガムの話を読むと、人間インセンティブなんかでそうそう快く協力してくれないのは万国共通で、やはり信頼関係や住民の方の巻き込み方、特に初期の巻き込み方がとても重要になってくるんだなと改めて思います。

 脈々と続く久山研究に携わる方、対象となっている住民の方や、研究する研究者の方、それを支える行政や保健師の方の協力と努力に頭が下がる思いです。