めごめも!

ひとりと1匹の生活記録。

「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論

献本お礼。

思ってもみないきっかけで献本頂きました。私は10年以上、学生講義をするたびにエピデミックを推薦図書として紹介しているんですが、そのお話を知り合いの方のフェイスブックに書き込んだらなんと著者ご本人から「ありがとうございます!」と書き込み頂いて、あれよあれよという間に献本頂くことになりました。(ちなみに今読み返してみるとエピデミック、読んだ当時はこんなに熱心に勧めるほどの熱意が文章からは全く感じられない苦笑)

実は何が献本されてくるかも全くわからず、気がついたら手元に届いたので読み始めたのですが、面白くて一気に読めてしまいました。私はブログを見てもわかるとおり、震災をきっかけにほとんど本が読めなくなってしまってここ数年は年に数冊かろうじて読むほど、今年の10冊があげられないほどの読書歴だったのですが、これはささーっと読めてしまった。

元々色覚についてはこれまた思ってもみないきっかけで、本書にも出てくる高柳先生の講義を伺う機会がありまして、背景知識としては持っている方だったと思います。が、石原表に感度特異度がないとか、海外の事情とか、そもそもなぜ色覚特性が人間にはあるのかという、遺伝的、進化論的な背景、そしてそもそも色の認知についての脳科学的なメカニズムまで一気に網羅している本だったので、最初読んでみようと思った印象とは全然違う読後感でした。タイトルにちょっと怖じ気づいてしまってすぐ読むか読まないかちょっとだけ悩んでしまったのはここだけの秘密(笑)。進化の過程でどう色覚というものが位置づけられてきたか、人はどう色を見ているのか、検査のこと、といった医療だけではなく科学的・進化的な背景ももちろん面白かったのですが、著者が当事者であるという一本通った背景が、面白さを際立て手いるような気がします。著者が当事者だったという背景は、終盤に思ってみない展開になりますので、ここではあまり言及しません。

石原表に苦しめられた人には是非手に取ってほしいと思いますし、中でも個人的に良かったと思ったのは、検査についての説明でした。石原表という検査の成立過程やその後の利用のされ方ももちろんですが、そもそも医療における検査とはどういう意味を持つのか、そういった点まで踏み込んで書かれているので、このコロナ禍の中だからこそ検査について深く考えるきっかけとしても、手に取って多くの人に読んでもらえたらなと思いました。

「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論 (単行本)

「色のふしぎ」と不思議な社会 ――2020年代の「色覚」原論 (単行本)

  • 作者:裕人, 川端
  • 発売日: 2020/10/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)